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ペシャワール会 中村哲医師に聞く。共に生きるための憲法と人道支援 <後編>


未来にどんな社会を望むのか。

中村哲さんの活動は、実は少なくない若い人に知られています。ASIAN KUNG-FU GENERATIONという有名なロックバンドの後藤正文さんという方が、中村哲さんの活動を知って、憲法と言ったものの理念を知ることができたということを発言されていました。SEALDsの中にも、それで中村哲さんを知ったという人が多いんです。

中村そうですか、私はその方面に詳しくなくて。(笑)

そうした中で、もし今日本の若い人に何かメッセージがあるとしたら、何を伝えられるでしょうか?

中村まず、年寄りの戯言には付き合わない。

一同:(笑)

中村君たちは、年寄りの後始末を担わされている。今まで成長、成長でやってきて、羽振りが良いことを至上の価値とした結末を知るべきです。

経済成長を続ければ何とかなると思ってはいけない。とんでもないことが待っているんだということだけは、訴えたい。別のベクトルを見つけ出して、より人間らしい健全な方向へ向かっていく方がいい。それでは企業収入が減るだとか、羽振りが悪くなるだとか、あるでしょうけれども、私はもっと別の生き方があるような気がしています。それを、「原発の電気を止めたらエアコンが使えず、年寄りが死ぬ」だとか、「他国が攻めてきたら黙って殺されるのか」とか、すぐそういう目先の議論にすり替えるから駄目なのです。「富国強兵」は、さんざん犠牲者を出した末に、もう賞味期限切れなのです。それとは異なる別のベクトル──人と人、人と自然が調和する世界をひらくことを目指し、徐々に社会が変わっていくことを期待すべきです。

最初は何もなかったアフガニスタンの砂漠に、3、4年の年月水路を作ろうとすることで実際に水が通り、木が生え、緑地になり収穫出来るまでになる、ということが現実に行われているのだということを知ると、社会が変わるということも本当に可能なのだと思わされます。

中村そうなんですよ。基礎がしっかりしていれば、例え始めはしょぼい木で、こんなもの本当に実がつくのかと思っていたものが、だんだん成長して行って、今はもうあの木は、15mですよ。

それは、何年ぐらい経って?

中村6年。

6年でですか!そこまでに至る道は想像するだけでも簡単ではないことがわかりますが、それを現実のものとして来られて、まだ先を見据えて行動をされている。本当にすごいことです。

未だ本当には試されていない「平和憲法」が示すもの

SEALDsのメンバーは全員平成生まれで、バブルが弾けてもうこれから、上向きになることは何にもないと言われ続けた世代に生まれています。そんな中で、何かの活動をすることは無力なのかと思うことも多いのですが、しかし、文字通り砂漠に水を通し、緑を生んでいるペシャワール会の活動を考えると、まだまだ多くのことが可能なんだと気付かされます。

中村平成はバブル真っ盛りの時代でした。自分は殆ど日本に居ませんでしたが、拝金主義の最盛期でした。バブル後、せっかく健全な世界に向かおうとした時代に、架空の富を失った人々が嘆いていただけです。あの頃を考えると、なんで悲しんでいるのか、弾けて良かったのではないかと思う。少なくとも、この日本の豊かな自然──こんな豊かなところ、世界中にないです。この国土さえきちんと守り、我々が気立ての良い人々であれば、絶対に生き延びることができる。「気立てが良い」という意味は、人と喧嘩せず、殺しをせず、盗まないということです。金を使い、武器を使い、人を殺し、欺いてでも会社の羽振りよくする・・・・。そんな忙しいことしなくたって生きていく道がある。経済、医学、農業、全ての分野が変わらざるをえない時代が、きっとそのうちくると思います。

そのベクトルを示してくれるのは、本当の意味での憲法の理念なのかもしれません。そこには他者と共に生きて、平和を創りだすということが、ベクトルとして示されています。

中村まだそれは、本気で試されたことがない。いきなり、あまりに理想論だとか、アメリカが作ったとかの話になる。真面目にやってみて、どうしてもダメでという、そういう段階でもないじゃないですか。警察予備隊から保安隊になり、自衛隊になり、ついに、防衛庁から防衛省に格が上がった。今までやましいところがあるから、言葉で騙しながら来た。しかし、そのやましいという気持ちさえ捨ててしまうと、大変なことになります。

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