強行採決が、民主主義にとってどのような問題をもっているのか、ざっと見てきました。最後に、いくつか言いたいことを言って、終わろうと思います。
最後に改めて
とりあえず言いたいことは二つあります。
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まず一つ目は、僕(この記事を書いてます)の個人的な立場についての話です。
さっきから、多数派と少数派の関係から、TPPの採決についていろいろ言ってきました。「民意を反映する政治をしろ」というのは、結構それっぽい議論です。でも、もう一方で問われるべきは、「じゃああなたは民意の大多数が右と言ったら右に行くんですか?」ということです。
もし仮に民意の大多数がTPPに賛成し、安保法制に賛成し、秘密保護法に賛成し、一億総活躍にバンザイしていても、僕はこれらの法制に反対であり、また(少なくとも現行の)安倍政権に反対しています。
別に僕の立場を押し付けるつもりはありません。ただ言いたいのは、地に足のついたカルチャーが大事だということです。それが一見民主的だろうが、自分には自分の立場がある。
もちろん、まっとうな手続きをもって可決された法について、ただ単に反対を貫くのもどうなの? という議論もあるでしょう。また、その手続きのなかで自分の考えが変わることだって往々にしてあります。でも少なくともこの文脈からすれば、強行採決されるような法は、果たしてそのような真っ当なプロセスを経た法なのか、果たして少数派が議論を尽くしたうえで納得するような法なのかということが問題になります。
僕自身は、今回のTPPをめぐる政治過程はあまりにも杜撰だったと考えています。そして仮にアレを「強行」と呼ぶ/呼ばないという議論を無視したとしても、あのようなかたちで通ったTPPの内容について、僕は反対しています。
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二つ目は、野党に関することです。
実のところ、強行採決というのは与党にとってもあまり得策ではありません。というのも、通したい法を通せたところで、その後の法運用に際してその正統性が問題となってしまうからです。また、強行採決は、どうやったって世論ウケが悪いものです。
しかし今回、与党は強行採決に踏み切りました。ここには、安倍政権が選挙を睨んだうえで、かりに強行採決をしたところで野党の支持には繋がらないから強行採決ができたのではないか、という指摘がありえます。
僕自身は、少なくともTPPをめぐる政治過程について、民進党はそれなりにしっかりと対抗姿勢を示し、TPPの問題点を浮き彫りにするなどの仕事をしていると考えています。もちろん、民進党にも変わるべき点は多々ありますし、全肯定する気は毛頭ありません。
しかし肝心なことは、こういった強行採決に対する歯止めとして、選挙のさいに強行採決がネックとなるような状況をつくる必要があるということです。より具体的には、安保法制などをふまえた「非立憲」与党の動きに対抗し、有効かつ勝ち目のあるオルタナティブとしての立憲4野党というスタンスを前面に出していくということです。
このためには、市民の働きかけが絶対に重要です。そして、それに応じて政党が徐々に変わっていくことを示す必要があります。どのみち、議席で圧倒的多数を握られている以上、それが強行であろうがなかろうが、TPPは採決されます。大切なことは、野党がより一層の政権にたいする対抗力をもつためにも、市民とのつながりを強固にし、与党をゆさぶるようなオルタナティブとして、自党の存在をアピールすることです。こうした試みは、与野党どちらかの立場を問わず、議会政治の健全化(強行採決を許さないような)を願う立場から、肯定しうるものです。
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今回、強行採決がなされたのは衆議院特別委員会です。これから本会議があり、そのあと参議院で話し合われます。TPPの内容についてはいろいろな意見があると思います。
しかし大切なことは、そういういろいろな意見があることを前提としたうえで、どうやってそのいろいろな意見を組み入れつつ、TPPの内容をよくしていくか(よくならない場合には廃案にしたり)ということです。そのうえで、私たち一人一人が知識をもち、政治状況を見つめ、政治家が仕事をきちんとしているかを監視し、おかしければそれにNOをつきつけていくことが、究極的には一番大事です。
オススメ
まずTPPの問題点については、以下をチェックしてみてください。二つのムービーはわかりやすく、ReDEMOSは今後もこういったのを出していくみたいなので、要チェックです。
POST
・TPPが日常を変える? - 二次創作、薬、化粧品、みんな大好きお肉まで http://sealdspost.com/archives/4939
ReDEMOS(シンクタンク)
・2分でわかるTPPhttps://youtu.be/RiZ0COxQSHs
・『TPPはこのまま可決して大丈夫なのか』ReDEMOS Live vo.1 出演 竹内彰志 https://youtu.be/R9vOnbR6G64
民主主義と少数派の関係については、丸山眞男「政治的判断」(杉田敦『丸山眞男セレクション』所収)がとても分かりやすくかつ論理的に書かれており、オススメです。