“もう しんだことに なっている ぞうを いつまでも いかして おくことは できません。”——— p.19
戦時中、上野動物園にいた三匹のゾウが餓死させられた。「空襲で檻が壊れたら危険だから」という理由ではない。この命令の本当の意味は、人気者のゾウを殺すことで、この国の全てを戦争に巻き込むことだった。戦争は、子どもだからといって、動物だからといって、避けては通らない。戦場に行く兵士だけでなく、あらゆるものに見えない軍服を着せてしまうのだ。例外はない。それは「大きな渦」だと、飼育員の小森さんは「絵本によせて」に書いている。
かりん
BOOK'S SELECTION
ビヒモス — ナチズムの構造と実際
フランツ・ノイマン 著; 岡本友孝, 小野英祐, 加藤栄一 訳
みすず書房
1963年
“もともと総統は単なる首相であった。もちろん彼はそれまでの誰よりも冷酷で、かつ 1933 年の全権委任法によってずっと強大な権力を持つようになった...” ——— p.78
「ナチスの手口に学べ」と、ある時この国の副総理は言った。世界一民主的な憲法だと言われたワイマール憲法がある日気づいたらナチス憲法に変わっていた、その手口を学べと。そしてその新しい憲法草案には、1933 年の全権委任法と同じく内閣に立法出来る権利を持たせる、国家緊急権が定められている。単なる首相 が「総統」に変わってしまう前に私たちこそが、「ナチスの手口」 を学ぼう。きっとこの第一級の研究書は、ナチスと同時代を生きた著者から渡された本だ。歴史を繰り返さないために。
平葉
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