“もう しんだことに なっている ぞうを いつまでも いかして おくことは できません。”——— p.19
戦時中、上野動物園にいた三匹のゾウが餓死させられた。「空襲で檻が壊れたら危険だから」という理由ではない。この命令の本当の意味は、人気者のゾウを殺すことで、この国の全てを戦争に巻き込むことだった。戦争は、子どもだからといって、動物だからといって、避けては通らない。戦場に行く兵士だけでなく、あらゆるものに見えない軍服を着せてしまうのだ。例外はない。それは「大きな渦」だと、飼育員の小森さんは「絵本によせて」に書いている。
かりん
BOOK'S SELECTION
チポリーノの冒険
ジャンニ・ロダーリ 作; 杉浦明平 訳
岩波少年文庫
2010年
“「人間は、できるだけのことをしなくてはなりません。」と、クモはつつましく答えました。” ——— p.282
野菜と果物の国に暮らす、タマネギぼうやのチポリーノが、無実の罪で投獄された父親を助け出す冒険談。それはファシズムに抵抗し生き抜いた、イタリア市民の物語でもある。暴力と不正に満ちた理不尽な社会において、人間としてねじまがらないで生きるとはどういうことか。誰がファシズムを容認するのか。第二次世界大戦中、ファシズムに抵抗するレジスタンス運動に参加した作者は、この愉快な物語に、人間の持つ力と希望、そして課題を描いてみせた。
かりん
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