ぼくはくまのままでいたかったのに

ほるぷ出版 1978年
イエルク・シュタイナー 文; イエルク・ミュラー 絵; おおしまかおり 訳


“なにか だいじなことを わすれてしまったらしいな、とくまはおもった。はてなんだろう?”——— p.32

冬眠から目覚めたクマは工場労働者と間違えられ、しだいに自分は人間だと思い込む。工場をクビになり森へ解放されほら穴をまえにしてもなお、クマであることを思い出せない。自我は社会との関わりのなかで常にアップデートされていくものだ。子どもらしくと言われれば子どもに、ママと呼ばれればママになる。この季節になると私たちは就活生とよばれ一様に黒のスーツに身をつつみ、時には自分を演じて面接にのぞむ。さて、そこに私はいるのだろうか。

七田

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