“離脱の精神を含まぬ単純な『参加』主義は、『翼賛』という名に代表される左右大小さまざまの追従主義を生む。そのことは既に歴史が痛烈に教えている。”——— p.256
「戦後日本の思想家」 と聞かれて真っ先に思い浮かぶのがこの藤田省三である。 彼は「日本思想」の研究者であり、「高度成長期」という時代を見る思想家である。 キーワードは「経験」、平たく言えば事物・事態との相互交渉そのものである。 藤田は時代にそれを喪失させる「管理」の圧制を見た。「テロルとの戦争」、セキュリティという名の「治安」が叫ばれる現代、日本の思想から私たちは学ぶところがあまりに多い。
古谷
BOOK'S SELECTION
永遠平和のために — 啓蒙とは何か : 他3編
カント 著; 中山元 訳
光文社古典新訳文庫
2006年
“「自分の理性を使う勇気をもて」” ——— p.10
題名を見て食傷めいたものを感じた。平和という言葉は、歴史の中で弄ばれ続けた結果、手垢にまみれ、陳腐な響きすら帯びてしまった。しかし、本書の中で使用されるこの言葉は、潔白で、危険に満ちて、瑞々しい。それは、お仕着せの決まり文句としてではなく、人類の肯定を目的に、カント自身が考え、紡ぎだした言葉だからだろう。彼は本書で、自ら思考することを説き、実践している。孤独な思考を通して、議論し合うための自分の言葉を産み出そう。
黙字
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