物騒なフィクション — 起源の分有をめぐって

筑摩書房 1994年
フェティ・ベンスラマ著; 西谷修訳・解説


“そこかしこで人はこぞって声を張り上げた。だって、たかがフィクションではないか、と。”——— p.34

チュニジア出身の精神科医で、現在パリⅦ大学教授の著者によってこの本が書かれたのは1994年。しかし2016年の今、ここに記された問題は一切古くなっていない。単なる「文学的フィクション」や「表現の自由」がなぜイスラームと衝突するのか。「西洋VSイスラーム」という単純な図式ではなく、両者が拠って立つ「テクスト」という概念に着目して描かれるこの本は、シャルリ・エブドを嚆矢とする「テロ」事件、そして「原理主義」そのものを考えるために今こそ復刊され、読まれるべき本だ。

JGJ

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