“そこかしこで人はこぞって声を張り上げた。だって、たかがフィクションではないか、と。”——— p.34
チュニジア出身の精神科医で、現在パリⅦ大学教授の著者によってこの本が書かれたのは1994年。しかし2016年の今、ここに記された問題は一切古くなっていない。単なる「文学的フィクション」や「表現の自由」がなぜイスラームと衝突するのか。「西洋VSイスラーム」という単純な図式ではなく、両者が拠って立つ「テクスト」という概念に着目して描かれるこの本は、シャルリ・エブドを嚆矢とする「テロ」事件、そして「原理主義」そのものを考えるために今こそ復刊され、読まれるべき本だ。
JGJ
BOOK'S SELECTION
生のあやうさ — 哀悼と暴力の政治学
ジュディス・バトラー 著; 本橋哲也 訳
以文社
2007年
“こうして人間が生まれていくのだ。何度も何度も、それがいったいどんな存在なのかを私たちはいまだ知りえないとしても。” ——— p.95
9.11と「テロとの戦い」以後、人命は悲嘆すべき死と価値のない死に振り分けられた。国家は哀悼を占有し、痛みを絶やすためにと、実際には暴力を増やしていく。そうすれば可傷性も否定した「自律的な主体」が保存されるかのように。しかし引き裂かれた私たちは、喪失の体験を共有することで人間へと帰り、出会い、別の未来に届く。台無しにしあうことさえ私たちの可能性なのだ。自主検閲と反知性主義に抗い、生への感覚を取り戻すための書。
うめてん
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