“こうして人間が生まれていくのだ。何度も何度も、それがいったいどんな存在なのかを私たちはいまだ知りえないとしても。”——— p.95
9.11と「テロとの戦い」以後、人命は悲嘆すべき死と価値のない死に振り分けられた。国家は哀悼を占有し、痛みを絶やすためにと、実際には暴力を増やしていく。そうすれば可傷性も否定した「自律的な主体」が保存されるかのように。しかし引き裂かれた私たちは、喪失の体験を共有することで人間へと帰り、出会い、別の未来に届く。台無しにしあうことさえ私たちの可能性なのだ。自主検閲と反知性主義に抗い、生への感覚を取り戻すための書。
うめてん
BOOK'S SELECTION
立憲主義について — 成立過程と現代
佐藤幸治 著
左右社
2015年
“われわれは、立憲主義を侮蔑し、「力」への信仰に走った国々によってあの第二次世界大戦という未曾有の悲劇が引き起こされたことを決して忘れてはならない” ——— p.11
この本は私にとって「立憲主義」を知るための道しるべで す。古代ギリシャから続く歴史を辿り、現代世界においてどのような意味をもつかが描かれています。そしてそれは、 「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果(憲法97条)」な のです。憲法学の権威である佐藤先生の研究の集大成ともいえる本作品。過去に起こった悲劇の背景を忘れてはならないと警笛を鳴らしているようにも思えます。憲法改正問題でゆ れる現代。今こそ手にとって欲しい一冊です。
岡歩美
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