“しかし、過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目になります。”——— p.11
ドイツが第二次世界大戦に敗れた40年後、「もう過去の傷を開きたくない」と口にして、「過去」の出来事に耳を塞ぎ目を閉ざそうとした人たちがいた。そんな空気に一石を投 じたのは当時の大統領ヴァイゼッカーによる終戦40周年 演説だった。「過去」は「過ぎ去った」忘れていい出来事であってはならない。私たちが、そして私たちより前の世代の人たちが何をしたのかを学ぶこと、これが本当の意味で「未来」に向かって歩を進めることだ。
まっしゅ
BOOK'S SELECTION
生のあやうさ — 哀悼と暴力の政治学
ジュディス・バトラー 著; 本橋哲也 訳
以文社
2007年
“こうして人間が生まれていくのだ。何度も何度も、それがいったいどんな存在なのかを私たちはいまだ知りえないとしても。” ——— p.95
9.11と「テロとの戦い」以後、人命は悲嘆すべき死と価値のない死に振り分けられた。国家は哀悼を占有し、痛みを絶やすためにと、実際には暴力を増やしていく。そうすれば可傷性も否定した「自律的な主体」が保存されるかのように。しかし引き裂かれた私たちは、喪失の体験を共有することで人間へと帰り、出会い、別の未来に届く。台無しにしあうことさえ私たちの可能性なのだ。自主検閲と反知性主義に抗い、生への感覚を取り戻すための書。
うめてん
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