“主権国家という近代的制度、そしてそこに埋め込まれた領域的権力が、著しい人権侵害を行う凶器となりうるという当たり前のことを忘れないでおきたい”——— p.6
昨年、安保法制を巡る議論において、しきりに平和や安全という言葉が使われた。「安全保障」と言うとき、必然的に国家が前提とされる。しかし、それは必ずしも私たち個人の 「安全保障」ではない。国家は国家であるがために「敵」や「他者」を必要とし作り出す。そしてそのために平和や安全という言葉が使われる。本書は、従来の議論では不可視化されてきた、中央に対する周辺から「安全保障」を考えることで、新しい見方を私たちに提示してくれる。
けんと
BOOK'S SELECTION
反貧困 — 「すべり台社会」からの脱出
湯浅誠 著
岩波新書
2008年
“貧困は自己責任ではない。貧困は、社会と政治に対する問いかけである。” ——— p.220
貧困は、自己責任という言葉で語ることのできない問題で ある。自由に未来を選択できる状況の中で、自分の選択に対 して責任を持つことは当然だ。しかし、貧困は違う。誰が望 んで進学をあきらめるだろうか。誰が望んで奨学金を借りる だろうか。生活困窮者支援の現場で戦ってきた著者は、この 国に広がる貧困問題の原因を統計と経験から論じ、政府がしばしば口にする自己責任論を丁寧に論駁する。貧困問題を一 から学び、具体的な解決策を知るための一冊。
ともか
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