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VOICE  寺田ともか


私の周りには、社会的な問題に関心の強い友達がわりといた。

彼らは、世界のどこかで起きている問題を、いちいち自分に引き寄せて考えるから、いつも何かしらのことに心を痛めてたし、それに対して行動を起こそうとしてた。

私は、それ自体はとても良いことだと思ってたし、応援してた。

けど、ただそれだけだった。

私自身も、どうして社会は変わらないんだろうとか、どうして戦争は終わらないんだろう、みたいなことは、小さいころからの疑問として持っていたけど、どうも、いわゆる意識高い系の奴らがあんまり好きじゃなかったし、ヘトヘトになってまでやっているのを見て、もっとスマートにやればいいのに、とか、そういうのほんと好きだね、とか思いながら、まぁ無理しない程度にがんばってね、応援してるよ、って言って見てた。

でも、ある時それが、ものすごく恥ずかしいことだって気づいた。

わたしは、この社会をつくっている主体の一人なのに、観客席に座って、上からコートを眺めて、おい、もっと走れよって、なんでそこでゴールを決められないかなって、まるで監督みたいに文句を言ってて、だけど、わたしだってこの社会のプレーヤーの一人だった。

コートに出もせずに、本当は存在しない、安全な観客席に座っているつもりでいた。

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だけど、そんなわたしにも、ボールは回ってきた。
汗にまみれて、泥だらけで、たくさん傷がついたそのボールは、わたしに、こう問いかけながら迫ってきた。

「民主主義ってなんだ」

もう逃げられないと思った。
それで、やっとわかってきた。

小さい頃からずっと思っていた、どうして社会は変わらないんだろう、どうして戦争は終わらないんだろうという問いは、わたし自身に向けられた課題であったと。

もう、まるで神様みたいに、とても高いところから社会を俯瞰して、プレーヤーを馬鹿にしたり、あるいは他人事のように応援したり、勝手に評価したりするのはやめようと思う。

それが、何の意味もないものであることに気が付いたから。下手くそでも、笑われてもいいから、このボールを、わたしなりに、自分のやり方で、少しずつ前に進めようと思う。

そして、はじめわたしがバカにしてた人たちの地道な行動は、少しずつ、わたしを含め多くの人に、自分がこの社会を作っているプレーヤーであることを自覚させ、孤独に思考し判断する人間を増やし、それがひとつの大きな塊となって、野党が選挙協力をするまでの力になり得た。

 

そんなこと、まるで想像していなかった。
やってみなければわからないことが、たくさんある。

 

 

前に、、自民党の国会議員の人が、憲法改正草案について、こんなツイートをしてるのを見た。

「国民が、権利は天から付与される、義務は果たさなくてもいいと思ってしまうような天賦人権論をとるのはもう止めようというのが、私たちの基本的な考え方です。国があなたに何をしてくれるか、ではなくて国を維持するには、自分に何ができるか、を皆が考えるような前文にしました。」

 

国のために何ができるか、というこの問いに真面目に答えようとするならば、まず、では国とは何であるか、という根本を問わなければらないだろう。

国とはなんだろうか。
国とは、すなわち私たちのことだろう。

国という、何か大きな守るべきものがあってそれを私たちが支えているのではない。
私たち一人ひとり、尊重されるべき大切な個人の集まりが、互いに支え合って生きている、それが国だ。

 

自民党が出した憲法改正草案を見れば、まるでお国の役に立てる人間にのみ、人権が与えられるかのような思想が根底にあることを感じる。

だけど、基本的人権とは、生きる権利とは、いのちの価値とは、生産性の有無や、その人が持つ能力や、お国の役に立てるかどうかといった条件で決まる類のものではないはずだ。

私たちは、過去の過ちから、そんな古い価値観はかなぐり捨てて、すべてのいのちには、いのちそのものに絶対的な価値があるという、ゆるぎない確信に基づいて、この国を築いていきたい。

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だから、私が今、国のために何ができるか、という問いに答えるとするならば、まるで戦前のような古い価値観に基づいてつくられたこの憲法改正草案を、絶対に通さないために今、選挙に行くことを呼びかけよう。

私の、私たちの人生の主体は、私であり、あなたであって、私は、時の権力者に、私の生きる意味や目的を定められたくはない。

私たちにとって、何が良いことで、何が悪いことかは、自分の信じるものや、良心の声に従って、自分で判断する。

これまで、適当にどこかに投票していれば、なんとなく社会は回ると思っていた選挙は、今、わたしにとって、私たちのいのちの尊厳に対する、根本的な価値観を問う選択となっている。
個人を尊重しない政党に、これ以上この国のことを決めて欲しくはない。

いのちの価値を理解できない虚しい価値観の人々に、これから生まれくるこどもたちの、大切ないのちや未来を、預けるわけにはいかない。

すぐに現状が良くなるわけではないし、次の選挙で何か革命的なことが起こるわけではないだろう。

しかし、観客席にいたわたしが、今こうやって選挙に行くことを呼びかけているみたいに、社会は、少しずつ、だけど着実に変わってきてる。

それは、自分の与えられた現場に立ち、声を上げることをやめない、あなたがいたからだ。
この、地道な努力を、続けていこう。

こどもの権利が保障され、また安心してこどもを預けることのできる社会のために。

武力によらない安全保障のあり方を実現できる社会のために。

性別や国籍の違いによって、自分らしく生きることを阻まれることのない社会のために。

異性であれ、同性であれ、わたしたちが、人間として愛し合うことが認められる社会のために。

学ぶ意思のある若者が、多額の借金を背負わなくても、自由に学べる社会のために。

そして、わたしが、私であるために。

「選挙に行こうよ」

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