kobasyun

VOICE  小林俊一郎


社会を変えてくれと友だちが言ったのはぼくが運動に精を出していることを踏まえての冗談だったのだろうが、ぼくはそれならばお前もデモに足を運んでくれと少し本気になりかけながら返したのだった。
左翼ではないからと首を横にふりながら結局言われたが。

ぼくはしかし思うのだ。
2011年3月11日の大地震とその後に起きた一連の出来事によって、ぼくらの社会は変わることを余儀なくされたではないかと。

ぼくは大学生になって賢くなったかもしれないが逆かもしれない。
余計なことばかり頭に詰め込んで大事なことについては何が何だか分からないという分からなさばかりがあった。
これは頭と身体の使いようの問題なんだとあるとき思い始めて以来いろいろなところに足を運び人と話しているが、そのなかで学んだことがある。
それはいろんな物事の根っこはだいたい同じであり、違うのはそれを読み書き語るひとりひとりであり、ひとりひとりの言葉であるということだ。

2015年8月30日の国会前決壊に立ち会うことができたのはぼくの生きてきた中でいまのところいちばん光栄なことだったかもしれない。
初めに路上へと人が溢れたのはぼくがいたのとは反対側の歩道だった。ぼくが心を打たれたのは彼岸の決壊をみてバリケードの向こう側の路上へと向かいだした同じ岸の人びとだった。
変わらない意味ない意味ないと或る人らは言う。だが目の前で起きることにぼくらがいかに刺激を受けていてもたってもいられなくなるのか、あの時にはっきりしたと思うのだ。
自分への問いかけが始まるのだ。変わらなければいけないのではないかと。
歩き始めなければいけないのではないかと。

何かが起こればどうすればいいだろうかとぼくらは皆考える。
それについて絶対的な答えなどというものは滅多に知ることができないのだが、誠実に問い続ければ少なくとも道くらいは示される。

もちろんぼくは歩き始めたばかりであり目的地はまだ見えない。

 

 
キングを先頭に据えて人びとが歩いたセルマの橋の前でオバマはこう言った。
ウィー・ノウ・ザ・マーチ・イズ・ノット・イェット・オーバー。

 

誰の歩みもまだ終わってはいない。

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