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VOICE 矢野和葉


雨に濡れれば「寒いですね」と言う。スピーチをしていて一ヶ所噛んでしまったと落ち込んでいる。

なんだ、私たちと同じじゃないか、と国会前で横に立っている国会議員たちの顔を見ながら思った。

20歳になった夏、初めて投票に行った私は緊張していた。ブルーシートで覆われた薄暗い小学校の廊下に大人がずらっと並んでいる。そこに自分が並んで立っていることが不思議だった。

野党共闘の象徴として「オール沖縄」が注目を浴びた。ある有権者のおじいさんが、統一候補の名前を書くときに「手が震えた」と取材に答えていた。生涯、書くことはないと思っていた候補や党の名前を、オール沖縄のために書いた。

議員として立った人たちに、私たちはなんて重たいものを背負わせているんだろう。だから、私たちは議員を「先生」と呼んだり、頭を下げたり、税金でその給与を保証したりするんだろう。そして彼らが私たちの代表として、背負うべきものを背負わず、代表として相応しくない行為をしたとき、私たちは彼らから議員という職を奪う。

自分の選挙区が言えるだろうか。
自分の地元の議員の名前が言えるだろうか。
衆議院と参議院の違いを説明できるだろうか。
何が争点として相応しいか判断できるほど、私は自分が住んでいる地域や、この国のことを知っているだろうか。

奪い、与える、これまでの私はその行為に見合った主権者だったかと言われたら、正直、目をそらしたくなる。

 

民主主義は民意の失敗を許容する。何故ならそれを再び民意によって正すこともできるから。失敗を許容する限り最善であることはない。けれど、少数者を保護し、失敗を正すことが出来るので最悪にも陥らない。

 

次の選挙も、その次も、その先も。

多数決主義ではなく民主主義の名のもとで、護憲か改憲か問う前に立憲主義に基づいて、政治と選挙がおこなわれていて欲しい。

 

この夏の選挙は、議員にとっても、市民にとっても、しんどい選挙になると思う。私は一人の議員の名前を、一つの党の名前を書く。当たり前に行われているはずのことを守るために、全員がいろんなものを妥協するだろう。

オール沖縄の選挙で、投開票を見守るために会場に入りきらなかった市民が、建物の小さな窓から中の様子を長時間ずっと見守っていた。

手がふるえたと取材に答えていたおじいさんは、選挙結果を見て本当に嬉しそうに笑った。

そんな関わり方をしてみたいと思った。

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