“(持っていってくれ!取ったりんごくらいは、持っていってくれ!)”——— p.29
終戦の年、炭坑での強制労働から解放された中国人、朝鮮人たちが父のりんご畑にやってきた。 復員兵の父は日本軍の略奪に目をつむった自分を思い出しながら、りんごを売って家族を養うんだ取らないでくれと頼む。 すると骨と皮ばかり彼らはりんごを置いて静かに去っていった。 作者の父はりんごの季節になるとこの話を聞かせる。戦争が終わり人間性を取りもどす記憶。 平和が揺らぐ今、そしてこれからの時代、私たちは人間性を守り続けられるだろうか。
マサキ
BOOK'S SELECTION
民主主義ってなんだ?
高橋源一郎, SEALDs著
河出書房新社
2015年
“学ぼう。ぼくたちはほんとうに無知だったと思うから。謙虚になろう。ぼくたちが知っている世界の外にはもっと広い世界があるはずだから。憎しみに巻き込まれないようにしよう。いちばん怖い敵はそれだから。” ——— p.8
作家で70年代安保運動に関わっていた高橋源一郎とSEALDsメンバーの、運動や、民主主義についての対談を収録。70年代以降パタリと学生が社会運動に関わらなくなった日本社会において、2015年の夏に現れた運動の意味とはなんだろうか。 SEALDsの学生たちが考え行動する、その根幹にある思想が、古代から試行錯誤を繰り返してきた「民主主義」という文脈において語られる。 読み終わる頃には、SEALDsが出てきたことは当たり前であり、必然だったと気付かされる。
芝田万奈
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