“筆者は本書を「夢を語ろうと思う」という言葉で始めた。”——— p.235
著者が再三繰り返すように、これは夢についての本である。民主主義にまつわる思想や哲学を、丁寧かつ平易に解説しながら、かつてルソーによって夢見られた「一般意志」という概念などに、現代において何を夢見ることができるかが模索されている。多くの夢と同様、それらは儚く、読み進めるにしたがって、無数の疑問を抱かされる。その疑問を切っ掛けに、読者自身の、民主主義についての夢想と思索が始まる。本書はその入り口へのよき案内人となる 。
黙字
BOOK'S SELECTION
フェミニズムの政治学
岡野八代 著
みすず書房
2012年
“一見すると個人的にみえる応答の仕方であったとしても、そこに社会変革への道が拓かれるのだ” ——— p.358
夫との不仲に悩む専業主婦の女性が、子どもの将来と、再就職への不安、両親の介護を考え、離婚を諦めた。 近代的なリベラリズムの個人観に当てはめれば、彼女は「未熟で判断能力がない個人」である。 一方、「自立した個人」とされる夫は、妻のサポートを無自覚に享受する。 私たちは、生まれてから死ぬまで誰かに依存し、他者のケアなしには生きられない。 そのあまりに普遍的で、しかし大文字の政治学が忘れ去った大前提から社会構想を考える。
大澤 茉実
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