“福島原発の大事故は、自然にたいして人間が上位に立ったというガリレオやベーコンやデカルトの増長、そして科学技術は万能という十九世紀の幻想を打ち砕いた。”——— p.91
福島の第一原子力発電所が大事故を発生させた時、当時の政治家や電力会社は口々に「想定外」と発言した。当然、原発は人間の扱える限界、つまり「想定」を超えている。放射性廃棄物は何世代にも渡って負の財産を残し、事故が起きればその周辺の土地は使いものにならなくなる。それにも関わらず、原子力=「大国になるための条件」という幻想を抱きながら、原発に対する疑問を許さない空気を作り上げてきた。著者はそれを「原発ファシズム」であると批判する。
まっしゅ
BOOK'S SELECTION
ぼくはくまのままでいたかったのに
イエルク・シュタイナー 文; イエルク・ミュラー 絵; おおしまかおり 訳
ほるぷ出版
1978年
“なにか だいじなことを わすれてしまったらしいな、とくまはおもった。はてなんだろう?” ——— p.32
冬眠から目覚めたクマは工場労働者と間違えられ、しだいに自分は人間だと思い込む。工場をクビになり森へ解放されほら穴をまえにしてもなお、クマであることを思い出せない。自我は社会との関わりのなかで常にアップデートされていくものだ。子どもらしくと言われれば子どもに、ママと呼ばれればママになる。この季節になると私たちは就活生とよばれ一様に黒のスーツに身をつつみ、時には自分を演じて面接にのぞむ。さて、そこに私はいるのだろうか。
七田
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