“ドキュメンタリー写真は、人間の尊厳をいかに表現するかという行為であると同時に、レンズがいかにプライバシーを侵害するかという、二律背反によってのみ成立する両刃の剣である。”——— p.23
「表に出ないものを引っ張り出してたたきつけてやりたい。」報道写真家、福島菊次郎の人間の生と向き合うことへの覚悟 と執念を表している言葉だ。空がピカッと光ったあの日から、 キノコ雲で覆い隠されたヒロシマとナガサキの街で、何が起 きていたのか。「被ばく者」と一括りでは語ることのできない戦後を生き抜いた一人一人の生き様が映し出されている。 これは、身体も心も蝕まれ、国に裏切られたとしても、命を燃やし続けた人びとの生きた証である。
さくら
BOOK'S SELECTION
想像ラジオ
いとうせいこう 著
河出書房新社
2013年
“亡くなった人の声に時間をかけて耳を傾けて悲しんで悼んで、同時に少しずつ前に歩くんじゃないのか。死者と共に” ——— p.141
あの日失われた多くの命。 私たちはもう彼ら彼女らには出会えないのだろうか。 何事もなかったかのように暮らしてゆかねばならないのだろうか。 そうして他愛もなく話している時、私たちはふと気づく、こうして話している言葉を彼らも彼女らもまた話していたのではなかったか。 私たちが言葉を話す、と同時に言葉が私たちを話させる。 想像せよ。耳を澄ませば聞こえるはずだ。 そして語り続けよ。 未来のために。「想—像—ラジオ—」
羽鳥涼
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