“主権国家という近代的制度、そしてそこに埋め込まれた領域的権力が、著しい人権侵害を行う凶器となりうるという当たり前のことを忘れないでおきたい”——— p.6
昨年、安保法制を巡る議論において、しきりに平和や安全という言葉が使われた。「安全保障」と言うとき、必然的に国家が前提とされる。しかし、それは必ずしも私たち個人の 「安全保障」ではない。国家は国家であるがために「敵」や「他者」を必要とし作り出す。そしてそのために平和や安全という言葉が使われる。本書は、従来の議論では不可視化されてきた、中央に対する周辺から「安全保障」を考えることで、新しい見方を私たちに提示してくれる。
けんと
BOOK'S SELECTION
ぼくはくまのままでいたかったのに
イエルク・シュタイナー 文; イエルク・ミュラー 絵; おおしまかおり 訳
ほるぷ出版
1978年
“なにか だいじなことを わすれてしまったらしいな、とくまはおもった。はてなんだろう?” ——— p.32
冬眠から目覚めたクマは工場労働者と間違えられ、しだいに自分は人間だと思い込む。工場をクビになり森へ解放されほら穴をまえにしてもなお、クマであることを思い出せない。自我は社会との関わりのなかで常にアップデートされていくものだ。子どもらしくと言われれば子どもに、ママと呼ばれればママになる。この季節になると私たちは就活生とよばれ一様に黒のスーツに身をつつみ、時には自分を演じて面接にのぞむ。さて、そこに私はいるのだろうか。
七田
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