投票先に困っているアナタに 戦略的投票の提案です。
7月10日が、参議院選挙の最終日。
「早く投票を済ませたいのに、投票先が決まらない!」
と、困っている方は、多いのではないでしょうか。
特に、複数区に住んでいる方は、選挙の争点が目立たない今、誰に投票すればいいのかわかりにくく、迷ってしまうかもしれません。
「自民・公明党も支持できないけど、野党も好きになれない。棄権しようかな」
「棄権するくらいなら、面白そうなインディーズ候補者に投票しようかな」
そんなアナタに、「戦略的投票」の提案です。
※投票の仕方・考え方は、当然ですが個人の自由です。この記事はあくまで、投票の際の一つの参考にして下さればと思います。また、この記事は今回の参院選挙の状況に対しての提案です。
■目次
1.この選挙で決まること
2.日本の選挙の特徴を知っておく ── どうして作戦が必要なの?
3.「戦略的投票」って何だろう?
4.最後に ── 政治はつくるもの
1.この選挙で決まること
第二次安倍内閣が2012年12月に始まり、今回が2度目の参議院選挙です。前回の参院選挙は2013年。その選挙で「安倍自民一強政治」が出発しました。
3年前、有権者の多くは民主党政権に失望していました。その結果、多くの人が棄権を選択しました。また、安定した政治のもとで景気対策に取り組むことを期待し、「ねじれ国会」解消を許しました。
しかし、安倍首相はその期待に応えていません。それどころか経済は、破綻の一途をたどっています。多くの人が暮らしにアベノミクスの効果を実感できていません。また、最近では、アベノミクスの成功を演出するため、危ない運用先に手を出し、私たちの年金5兆円を溶かしてしまったことも報じられました。
結局、「安倍自民党一強政治」によって行われたことは、景気回復ではなく「特定秘密保護法」「安保関連法」「派遣法改正」などの強行採決でした。どれも選挙の際には、まったく争点にされませんでした。そして、今回の選挙後は、日本国憲法の書き換えに着手することを、安倍首相は名言しています。
このことは、景気回復を重視している有権者にとっても、ゆゆしき問題です。なぜならば、国の土台である日本国憲法をいじるとなると、政治は不安定になるからです。景気対策に割かれるべきエネルギーのほとんどが、憲法改正をめぐる攻防に費やされることも、容易に予測できます。
それを望んでいないことを安倍首相に伝える、最も簡単な方法が、この参院選挙です。改憲発議に必要な賛成は、3分の2以上。つまり、安倍政権下での改憲に反対する野党が、最低3分の1以上の議席を獲得する必要があります。
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2.日本の選挙の特徴を知っておく
── どうして作戦が必要なの?
2013年以降、大幅に議席を増やし「安倍自民党一強政治」をしている安倍政権ですが、実は、得票数はほとんど変わっていません。議席のみが増えています。
その原因は、「死票」の出やすい選挙制度です。
参院選挙では、都道府県ごとに得票の多い順に2~12人を選出する「選挙区選挙」と、全国を1つのブロックとして、政党が獲得した票数の比率に応じ議席数を分け合う「比例代表選挙」の2種が行われます。
「比例代表制」の方は、票が“支持政党”として反映されやすいのが特徴です。一方、「選挙区制」の方は、順位が下の候補者は落選してしまいます。そのため、切り捨てられてしまう票、「死票」が出やすいのです。
組織票が強い自民・公明党は、「比例代表制」はもちろん「選挙区制」においても有利です。ところが、組織票が相対的に弱い野党は「選挙区選挙」では、安定した議席を得ることができません。またリベラル勢力は主張が細分化されやすく、候補者が乱立してしまいます。その結果、無党派層の票が割れてしまいがちです。こうして割れた票のほとんどが、議席に反映されない「死票」となります。
つまり、組織票の強い自民・公明党は、棄権者と死票が増えれば増えるほど、議席を増やすことができます。棄権と死票が、自民・公明党への投票と同じ効果をもたらしているのが、現在の選挙制度の状況です。
こうした選挙制度において、無党派層がその意志を「議席として」反映させるにはどうしたらいいのでしょうか?
3.「戦略的投票」って何だろう?
その一つの答えが、「戦略的投票」です。「戦略的投票(Strategic Voting)」とは、自分にとって“最善の候補者”ではなくとも、当選の可能性がある“次善の候補者”に投票するというものです。そうすることによって、“最悪の候補者”の当選を阻止することができます。
たとえば、もっとも定数の多い東京選挙区を例に考えてみます。
東京選挙区では、6人の議員を選出されます。しかし、立候補者は31人もいます。いったい、誰に投票すればいいのでしょうか?
ここで各報道機関が出している当落予想の1位〜7位までを見てみましょう。
調査によって数字はまちまちで、順位も変動します。しかし、6つの議席のうち、上位5つはこの5人が占めると予測されています。問題は最後の議席です。6番目、最後の椅子をめぐって、小川敏夫さん(民進・反改憲勢)と田中康夫さん(お維・改憲勢)が、激しくせめぎ合っています。
ここで「戦略的投票」の登場です。もし、アナタが「議会のバランス重視」「改憲よりも経済政策重視」「自民・公明党の不支持」を考えているならば、反改憲勢の小川候補となります。改憲勢という“最悪の候補者”を、最後の椅子に座らせるわけにはいかないからです。そのためには、たとえ浮かんできた候補者が、自分にとって“最善の候補者”ではなかったとしても、“次善の候補者”として投票先にする必要があります。
これが「戦略的投票」の考え方です。 つまり、最も評価しない候補者や政党・議席を取られてしまわぬよう、自分にとってはベストでなくとも、当選の可能性があるベターな候補者に投票するという選択の仕方です。もしくは、ある勢力が議会を占拠してしまわぬようバランスを考えて、全面的に賛同できなくとも、対立する勢力の有力な候補者に投票して、議会に送り込むという選択です。
4.最後に ── 政治はつくるもの
「戦略的投票」を考えた先に浮かんだ候補者は、あなたや私にとってのベスト(最善の候補者)ではないかもしれません。また、必ずしも「死票」が無意味なわけでもありません。その候補者が10年後、20年後に成長し、議会へ私たちの声を届けてくれるかもしれないからです。
しかし、日本国憲法の書き換えが目前に迫っている今、もし守りたい未来があるならば「戦略的投票」を考えてみてください。未来を守ることができるかもしれません。最悪な結果を、よりマシにできるかもしれません。
選挙は、買い物ではありません。完璧な商品としての候補者も存在しません。大切なことは、政治をつくり、社会を修繕していくのは、私でありアナタであるということです。そして、そのパートナーが政治家です。最善の候補者でないとしても、その人と対話を続け変えていくことが、私にもアナタにもできるのです。
危機的な政治状況での、今回の参院選挙です。
「戦略的投票」を、頭の片隅にでも置いて頂ければと思います。