先日、イギリスでEUを離脱するか否かの国民投票が行われました。
結果としては、僅差ではありましたが、離脱派が勝利を修めることとなりました。
そんな中、英Independent誌が運営するウェブサイト”Indy100”で、面白い現象を取り扱った記事が公開されました。
扱われているのは、EU離脱を訴えていた保守系新聞「ザ・デイリー・メール」による以下の記事です。
“So what does it all mean for you? How Brexit will affect your holiday money, mortgages, passports and health cover”「つまりどういうことなのか?EU離脱が休日のお金、ローン、パスポート、そして健康保険に影響する仕方」といったタイトルで、EU離脱の影響による今後の変化がまとめられています。
初めに挙げたIndy100の記事は、このザ・メールの記事を読んでEU離脱のデメリットを理解した人たちが、ショックを受けて残したコメントをいくつかまとめたものです。
例えば一番上の人はこう言っています。
![A](http://sealdspost.com/wp-content/uploads/2016/05/profile-icon01.jpg)
![B](http://sealdspost.com/wp-content/uploads/2016/05/profile-icon04.jpg)
![C](http://sealdspost.com/wp-content/uploads/2016/05/profile-icon02.jpg)
といった短いコメントも、下のような長めのものもあります。
![D](http://sealdspost.com/wp-content/uploads/2016/05/profile-icon03.jpg)
この人たちのうちほとんどは離脱に投票したかどうか直接に判断できるものはありませんが、そうであったとしてもおかしくはありません。なぜかと言うと、今回の国民投票では、「離脱」に投票したことに後から後悔している人がどうも多いという話があるからです。
「1票の重さ」に、投票の後で初めて気づく人たち
次のつぶやきは、イギリスのテレビ局BBCの番組編集者の方が、選挙の翌日につぶやいたものです。
With leave voters in Manchester for BBCNews -most told us they woke up thinking “what have I done?” & didn’t actually expect the uk to leave
— Louisa Compton (@louisa_compton) 2016年6月24日
「BBCニュース、マンチェスターで離脱に投票した方々―ほとんどの方は「わたしは何をしてしまったのだろう?」と思いながら目覚め、実際は英国が離脱することを望んではいなかった、と語っている」
また、バズフィードからはこんな記事も発表されています。
実は、極右政党と言われるUKIPのファラージュ党首をはじめとして、離脱投票を煽った政治家や新聞は、自分たちのプロパガンダが嘘であったということを認めています。今回の国民投票は、結果的に、人々のデマに基づく判断のために国が動いてしまったということになりました。しかし、仕方のないことだったと断言することはできないでしょう。
正しい情報がデマに比べてそれほど共有されていなかったとはいえ、それがデマかどうかを判断するチャンスがなかったかどうかは疑問ですが、必然であれ、偶然であれ、人々は情報の正確さに注意を払うことが難しかったようです。
見るかぎりでは、離脱派の人の中には、離脱するか残留するかという軸をあまり考慮せず、自分たちが政治の現状にフラストレーションに突き動かされるがままに票を投じることを決めてしまった人が少なくなかったということだと考えられます。
また、そのような態度での投票を促す空気が強かったということもあるでしょう。
さて、日本は7月10日に参議院選挙を迎えます。
EU離脱の国民投票のようなイエスかノーかではなく、選択肢は候補者の数だけ多く、投票者はその分悩むことになります。
現時点で多くのマスメディアが報道しているように、次の参議院選挙の争点としては、憲法改正が大きなものとなっています。
自民党は敢えてそのことを押し出さない方針で選挙運動を展開していますが、もし改憲勢力(自民党、公明党、おおさか維新など)が議席の3分の2以上を占める結果となれば、自民党の草案に基づいた改憲がなされる可能性が高まるということは誰の目にも明らかです。
そのための国民投票に至るまでの道筋として、参議院選挙があるという形になります。
ところが、参議院選挙は低めの投票率を記録するだろうという分析がすでになされているようです。それは何も今に始まった話ではなく、ここしばらくの間、あまりにも多くの人が、自らの一票を放棄しています
(例えば参議院選挙の投票率の推移はこうです。前回の参議院選挙では52.61%というとても低い投票率でした。http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/072sangi/)
また、各政党の掲げる公約や、社会に対する政治家の態度を熟考することなく、何となくの気分で、票を投じる相手を決めてしまっている人もいることでしょう。
とにかく、私たちは、価値ある一票を有意義に使うことができていないように思います。
私たちの好む好まざるに関わらず、7月10日は参議院選挙であり、その翌日にはその後の社会が起動するための歯車がすでに回り始めます。そしてその時には、票を誰かに入れたことも、誰にも入れなかったことも、私たち全員の行く末を決めるのに関係していくのです。
7月11日の朝に後悔しないためには、選挙の日にちゃんと投票所に行って、しかるべき相手に投票することが必要です。
そうでなければ、選挙の結果次第では、7月10日や11日以降の人生を生きていくことは、今よりはるかに大変なものになってしまうでしょう。
反対に、わたしたちの選択次第では、それとは真逆の未来を実現することもできるのです。
投票については以下の記事を。
どこに投票すべきか迷っているという方はこちら!
BOOK'S SELECTION
![](/wp-content/themes/sealdspost/images/book/0062.jpg)
永遠平和のために — 啓蒙とは何か : 他3編
“「自分の理性を使う勇気をもて」”
題名を見て食傷めいたものを感じた。平和という言葉は、歴史の中で弄ばれ続けた結果、手垢にまみれ、陳腐な響きすら帯びてしまった。しかし、本書の中で使用されるこの言葉は、潔白で、危険に満ちて、瑞々しい。それは、お仕着せの決まり文句としてではなく、人類の肯定を目的に、カント自身が考え、紡ぎだした言葉だからだろう。彼は本書で、自ら思考することを説き、実践している。孤独な思考を通して、議論し合うための自分の言葉を産み出そう。
黙字