“小説を読んだ私たちは想像することができる、彼、そして彼女が私たちの友人であり兄弟であり姉妹として傍らにあるような未来を。”——— p.311
世界が不条理に満たされている時に、文学は無力なのだろうか。本というものについて、少なくない意味を感じる者にとっては、一度は—あるいは、ずっと終わらない—問いに、アラブ文学者である著者は、その文学を読む中で問い続ける。 そうして紡ぎ出される著者の真摯としか言う他ない言葉それ自体が、その応答に思える。 どれほど望みのない状況であっても、文学は、人間が人間であるために存在し続ける、祈りのように。 「世界に記憶されることのない小さき人々の尊厳を想い、文学は祈りになる。」
JGJ
BOOK'S SELECTION
ぼくらの民主主義なんだぜ
高橋源一郎 著
朝日新書
2015年
“ぼくたちは、ぼくたちの「民主主義」を自分で作らなきゃならない。” ——— p.254
私事だが、ここ数年納得のいく作品がつくれていない。しかし、迷いながらも路上でシャッターを切り続け、あらためて言葉や学びや知識に貪欲になり、そうして自らの表現に立ち返った時、巷の光景が少しずつ広がる気がした。恐らくは誰もが、迷い悩み、現実を疑い、信ずるべきものを手探りで求めている。それでもなお、真摯にこの現実と対峙し、思考し続けることが、私たちの人間性を回復し、民主主義を創造する方法でありチャンスなのだと本書が実践し、証明してくれている。
ゆいぽよ
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