“おるがごつ、海のぶえんの魚ば、朝に晩に食うて栄華しよるもんが、なにが水俣病か――。”——— p.68
一九六一(昭和三六)年。不知火海(八代海)に面し、はるか沖には天草諸島を望むその地にて、ある病が「発見」された。海と共にその地で暮らす人々は、工場排水に含まれるメチル水銀に毒された魚を食したことにより、次々と非業の死を遂げていった。記録やルポルタージュの域は超え出ている。本書は、著者石牟礼道子が「近代への呪術師」となるべく、いまだ故郷に立ち迷う死霊や生霊の言葉を背負い綴った、土地の匂いが濃く立ち昇る魂の文学である。
KBTK
BOOK'S SELECTION
憲法9条の思想水脈
山室信一 著
朝日選書
2007年
“夢想であると嘲られ、蔑まれた議論が「現実」の問題点を明らかにし、「現実」の立っている基盤がはらむ問題点を掘り出してきたのではなかったろうか。” ——— pp.97-98
いくつもの流れを捉え、線として9条を見る。9条に現れている平和思想は戦後に生まれたポッと出の理想なんかではない。いくつもの思想と運動と戦争で失われた命への反省のなかから、具現化された結晶なのだ。そういった思想がとてももろいことを歴史が証明していることに気付くのと同時に、 その思想の緻密さとそれを育んだ人々の努力にも気付く。そしてまた問われる。どのように私たちがこの思想を発展させ、 後に生きる人に引き継ぐのか。
いたる
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