“僕を信じて付いてきた、あのニワトリを守り切れなかった。”——— p.228
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』は、盧溝橋事件の年に出た。 軍国主義が社会を覆い、言論が弾圧されていくなか、子どもたちに向けて計画されたシリーズの一冊だった。 この命がけの「君たちは、どう生きるのか」という問いを、著者は現在のなかに受けとめ、 「僕は」「僕たちは」という主語を置いた。性暴力、個と集団、兵役拒否、開発と自然破壊などを織り込み、自ら魂を殺害し戦争に適応する人間の姿を丹念に捉えた。70年前と今が鮮やかに繋がる。
かりん
BOOK'S SELECTION
文化と帝国主義〈1〉
エドワード・W・サイード 著; 大橋洋一 訳
みすず書房
1998年
“いかなる文化も単一で純粋ではない。すべての文化は雑種的かつ異種混淆的で、異様なまでに差異化され、一枚岩的ではないのだ。” ——— p.26
「文化」という言葉を使う時、何が表されるのか?それは「私たち」と、「彼ら」を分けるものになってはいないか。文化が他者を排除するために使われて来てしまったことを見据えながら、この本はその力について問いかける。それは、この時代に生きる誰もが「重なり合う領土、絡まり合う歴史」の中で生きているということを知りながら、それでも 「『私たち』についてだけではなく、他者について、具体的に、共感をこめて、対位法的に考える」こと。その想像力を私たちにもたらすものだ、と。
平葉
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