“僕を信じて付いてきた、あのニワトリを守り切れなかった。”——— p.228
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』は、盧溝橋事件の年に出た。 軍国主義が社会を覆い、言論が弾圧されていくなか、子どもたちに向けて計画されたシリーズの一冊だった。 この命がけの「君たちは、どう生きるのか」という問いを、著者は現在のなかに受けとめ、 「僕は」「僕たちは」という主語を置いた。性暴力、個と集団、兵役拒否、開発と自然破壊などを織り込み、自ら魂を殺害し戦争に適応する人間の姿を丹念に捉えた。70年前と今が鮮やかに繋がる。
かりん
BOOK'S SELECTION
ぼくはくまのままでいたかったのに
イエルク・シュタイナー 文; イエルク・ミュラー 絵; おおしまかおり 訳
ほるぷ出版
1978年
“なにか だいじなことを わすれてしまったらしいな、とくまはおもった。はてなんだろう?” ——— p.32
冬眠から目覚めたクマは工場労働者と間違えられ、しだいに自分は人間だと思い込む。工場をクビになり森へ解放されほら穴をまえにしてもなお、クマであることを思い出せない。自我は社会との関わりのなかで常にアップデートされていくものだ。子どもらしくと言われれば子どもに、ママと呼ばれればママになる。この季節になると私たちは就活生とよばれ一様に黒のスーツに身をつつみ、時には自分を演じて面接にのぞむ。さて、そこに私はいるのだろうか。
七田
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