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VOICE 山田和花


私には、小学校時代の授業を振り返ると真っ先に浮かぶ授業があった。

それは小学校四年生の時の道徳の授業でのこと。担任の先生からこんな質問がクラス全員に投げかけられた。

「とても仲良しな友達がいます。しかしその友達は遠方に引っ越すことが決まりました。二人は文通する約束をして別れます。間もなく、最初の手紙が届きました。その手紙は切手の料金が足りなかった。不足分は受け取ったあなたが支払いました。そのことについてあなたは少しがっかりして怒ります。さて、切手の料金が足りてなかったことを返信の手紙に書きますか?」

クラス全員が何らかの形で書いて知らせるって答えたけど、その中でただ一人「書かない」って答えたのは担任の先生だけだった。

先生は最後までなんで「書かない」派なのか理由を話してはくれなかった。
モヤモヤした私は、いろんな人にどうするか聞いてみたい衝動にかられ母に授業と同じ質問をしてみた。
母も「書かない」派だった。答えが聞けるような気になって理由を聞いてみた。

「手紙は話すのと違って文字として残るものだよ。大人になった時、一緒に過ごした大好きな友達からの手紙としてずっと残しておきたいと思うかもしれない。その子が大人になった時、手紙を読み返して料金のことが書かれていたら、どんな気持ちになると思う?」

返ってきた理由に、当時の私は、そんな先のことまで考えてたの?って。
自分では思いもしなかった答えにとても驚いたのを覚えてる。それが初めて、先を想像して判断するってことを意識した瞬間だった。

それ以降、私の物事の判断基準の中に時間軸というものが加わった。
そして私は、その時間軸の概念が今の政治には足りないんじゃないかなってすごく感じてる。

例えば選挙。
本音を言えば、投票をしに行く時間があるなら友達と遊びたい。
読み終えてない漫画の続きを読みたい。
ゲームしたり、期限まであと少しの課題を仕上げたい。
私の中のいろんな「今だけ」の楽しさや利益を求める感情が押し寄せてくる。
その今だけの楽しさを維持したいって気持ちが膨らんでくる。
選挙って、票を入れたらすぐに何かが変わるわけじゃない。

だけど、だから私は思ったんだ。
今だけを考えて選挙に行くか行かないかを判断するのはやめようって。
未来に起こりうることを想像して、自分のために一票を使おうって。

今度の参院選で自分で決めた目標がある。
それはバイト先の人たちが全員投票に行ってくれること。
正直こんなことやって、うざがられたり、無視されたり、変な奴扱いされて心が折れそうになることもあったから、「無理だよ、自分一人が身近な人を説得したってどれだけが変わるの?」ってひねくれてたこともある。

そんな時にぼーっと見ていたテレビの画面から軽々と4回転ジャンプを飛ぶ羽生くんの姿を見て「あれ?いつからこんなに4回転を普通に飛んでる場面が見れるようになったんだ?」て、ふと思った。そこからテニススクールでコーチに話してもらったある話を思い出した。

ロジャー・バニスター。長い間、1マイル走を4分以内で走ることは不可能とされていた壁を超えた人。一人だったらただの奇跡で終わったと思う。だけどこの続きが私にとってはすごかった。ロジャーが4分の壁を超えたあとの一年間に37人が4分以内で走りきって、翌年には約300人もの選手が壁を超えていった。

不可能って壁は自分が意識的にも、無意識的にも思い込んで作ってるもので、たった一回でも誰かが可能にしたら、今までの思い込みが解ける。無理かな?って思った瞬間に、目の前に圧倒的な壁が出来上がってしまうんだ、って。

だから私は諦めたくない。自分で壁を作って、何かのせいにしてその壁の前で立ち尽くしてしまう自分を変えるために。

いつの日か、「いつからこれが普通となったのだろう?」と言われる日が来るまで、
たかが一票が、いつから大事な一票になったんだろう?ってみんなが思える日が来るまで、

私は言い続けたい。

「選挙に行こうよ」

6月10日

山田和花

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