“「人間は、できるだけのことをしなくてはなりません。」と、クモはつつましく答えました。”——— p.282
野菜と果物の国に暮らす、タマネギぼうやのチポリーノが、無実の罪で投獄された父親を助け出す冒険談。それはファシズムに抵抗し生き抜いた、イタリア市民の物語でもある。暴力と不正に満ちた理不尽な社会において、人間としてねじまがらないで生きるとはどういうことか。誰がファシズムを容認するのか。第二次世界大戦中、ファシズムに抵抗するレジスタンス運動に参加した作者は、この愉快な物語に、人間の持つ力と希望、そして課題を描いてみせた。
かりん
BOOK'S SELECTION
苦海浄土 — わが水俣病
石牟礼道子 著
講談社文庫
2004年
“おるがごつ、海のぶえんの魚ば、朝に晩に食うて栄華しよるもんが、なにが水俣病か――。” ——— p.68
一九六一(昭和三六)年。不知火海(八代海)に面し、はるか沖には天草諸島を望むその地にて、ある病が「発見」された。海と共にその地で暮らす人々は、工場排水に含まれるメチル水銀に毒された魚を食したことにより、次々と非業の死を遂げていった。記録やルポルタージュの域は超え出ている。本書は、著者石牟礼道子が「近代への呪術師」となるべく、いまだ故郷に立ち迷う死霊や生霊の言葉を背負い綴った、土地の匂いが濃く立ち昇る魂の文学である。
KBTK
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