“――日本が敗けよった、言うたんやい。 ――どアホ。”——— p.477
1941年から敗戦までの、少年・洋の物語。 父を失った彼を見守るのは、元やくざの佐脇さんだ。 軍国主義の日本は「皇国の勝利のため、国民は皆、皇兵」という空気だが、少年の頭にさかんに明滅する広告の文言は「頑張るぞ、今年も!決意の戦場に仁丹あり」「逞しく玄米を噛みしめませう-歯を丈夫にするライオン歯磨」というばかばかしさ。 が、その軽さには、私たちも覚えがある。 小説だからこそ明確に伝わる軍国主義社会での細かな日常。 大阪弁が魅力的。
これつ
BOOK'S SELECTION
権力政治を超える道
坂本義和 著
岩波現代文庫
2015年
“国際政治の主体の最終的な単位として、 国家を想定するということは、裏返していえば、国家と国家との間の国際関係は、一種のアナーキーの状態” ——— p.126
日本の戦後平和主義と憲法の繋がりを考える。権力政治を重視した軍事的な勢力均衡には「最悪事態主義」が常に付きまとう。最悪の事態を免れるための軍事的な措置は当然軍事競争を促進させ、想定される「最悪事態」は、より悪化する。 不信感に基づいた駆け引きにより生まれる国家間の緊張関係 を信頼によって払拭しようとする態度は、まさに日本国憲法の前文と重なるのだ。日本の平和主義に触れながら、改めて新しい世界の在り方を思考してみよう。
みつ
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