“あなたは、誰と一緒に < 私たち > を形成していますか。”——— p.X
現代では社会関係の唯一の起点が〈私〉になっている。 〈私〉は一人ひとりが強い自意識を持つ。しかし、社会全体としてみると似通っていて、誰一人特別な〈私〉はいない。 どこかで不安や不満を抱えている〈私〉と、路上で声をあげ る〈私〉。立場や理想の違いを越えて〈私〉同士が出会い、 〈私たち〉の輪を広げる努力をすること。求められる民主主義のかたち。政治哲学の研究者である著者の、〈私〉と政治 を結びつける新しい回路を模索する一冊。
藤木耀
BOOK'S SELECTION
想像ラジオ
いとうせいこう 著
河出書房新社
2013年
“亡くなった人の声に時間をかけて耳を傾けて悲しんで悼んで、同時に少しずつ前に歩くんじゃないのか。死者と共に” ——— p.141
あの日失われた多くの命。 私たちはもう彼ら彼女らには出会えないのだろうか。 何事もなかったかのように暮らしてゆかねばならないのだろうか。 そうして他愛もなく話している時、私たちはふと気づく、こうして話している言葉を彼らも彼女らもまた話していたのではなかったか。 私たちが言葉を話す、と同時に言葉が私たちを話させる。 想像せよ。耳を澄ませば聞こえるはずだ。 そして語り続けよ。 未来のために。「想—像—ラジオ—」
羽鳥涼
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