YU1_9231 (1)

VOICE 野間陸


選挙。

うーん。何を書こうかなと考えて、
自分の中の選挙の思い出をわあーっと考えてみた。
すると一つ、なんだか自分自身でも思い出す事を拒否していた程の青臭い思い出が見つかってしまったので、その話をしてみる。

ーーーーー

7年前。中学2年生の時。
なんだか周りのクラスメートの温度感と自分のそれとの温度差に疲れてしまって、学校で誰ともしゃべらなくなった。
登校、授業、下校、誰かと関わるのをシャットアウトしていた。
すでに幽霊部員になりつつあった部活も辞め、なるだけ人と関わらない様にとゆっくりゆっくり生きていた。
まぁ誰しも人生で一度はある様なそういう感じのやつ。

休み時間は自分の席で小説を読むか、ぼーっと空想にふけっていた。
誰をもシャットアウトした学校生活とは、これどうしたものかヒマでしょうがないのだ。
今、巨大な怪獣が学校を襲ってきたらどっから逃げるか、とか。
死んだら自分の意識はどうなるか、とか。
空の果ての果てから地球を見下ろしたらどんななのか、とか。

誰とも関わりたくない人間にとって、誰かと関わらなきゃいけない状態を強制してくるモノというのは心底鬱陶しい訳で。
嫌でも目についたのが、「生徒会」という存在だった。
やれドッヂボール大会だ、やれ討論大会だと、余計なお世話だと思った。
「生徒会なんてなくなっちゃえばいいのに…」
そう思っていた矢先に、
次年度の生徒会役員を決める選挙が近い内にあるという話を小耳に挟んだ。
ちょうど、自分達の代から生徒会長が選出される選挙だった。
人より空想にふける時間があるというのも、これまた考えようなもんで、
「生徒会をなくすという公約を掲げて生徒会長に立候補して、仮に当選したら生徒会とかなくせんじゃないかしら」
なんていうトンデモな発想が生まれたりする。

そのトンデモ発想に忠実に、俺は生徒会長に立候補する事になる。
「なんかあいつ夏休み明けてからすごい暗くなってたのに、いきなり生徒会長立候補って何?」
みたいなコソコソ話を尻目に、選挙ポスターを作った。
他の立候補者のポスターは、アニメのキャラクターに吹き出しで「明るい学校生活を!」みたいなのが書かれている中で、
自分のポスターは、自分がなぜ選挙に出ようと思ったのか、という趣旨の文章を誰も読みたいと思わないだろうな、という程に所狭しと、しかも異常に抽象的に書き込んだ。
ランチの時間には、候補者がクラス回りをして「清き一票を!」なんて語りかける。
自分はいつも通り黙々と弁当を食べる。いつもと違うのは周りからの「お前なんでクラス回りしないの」的な視線だけ。
別に自分が何票獲得するかとか、事前に全校生徒に顔を売るなんてところに興味はなかった。

そしていざ、立会演説会と投票の日。
4人の生徒会長立候補者の内、2番目で演説をした。
1人目の候補者が演説を終え、体育館に「あーあーいつも通り下らん演説会やなー」という空気が充満し始めた時、
俺は「自分が生徒会長になったら、生徒会をなくします」という一言でしゃべり始めた。
たちまち体育館全体がザワザワし始め、生徒会担当の先生はものすごい形相でこちらに視線を送っていた。
自分の演説中、始終ザワザワしっぱなしだったその体育館には、俺の「生徒会じゃなくて何か行事とかをやりたいと思った人がその都度実行委員会つくってやればいいじゃん制度」の話なんて聞いている人はいなかった。

放課後、担任に呼び出され、
「何を考えてるんだ」という問いだけの説教を2時間ほどくらって、すっかりしょぼくれきって、
さてでは帰りますか、と下駄箱に向かったところ、
下駄箱の前に見慣れぬ掲示物があるのが目に入った。
それは、選挙の集計結果。ご丁寧に各候補者の得票数までバッチリ書いてあった。

一応見ておくか、と自分の名前を探したところ、
まぁ見事に俺の前に演説していた候補者の名前の横に当選の赤丸がついていた訳だが、その候補者に20票差をつけて次点に自分の名前が書いてあった。
あとの候補者は2人共、吹奏楽部からの立候補だったからお互いに票を潰しあったらしい。
しかしまぁ、だとしても思っていたよりも多くの人が自分に投票したんだなぁなんて思っていたところに、
柔道部でめっちゃヤンキーのなんとか君がたまたま通りかかってしゃべりかけてきた。
「あぁ、お前落ちたんやな。ドンマイ。お前の話おもろかったから俺は一票入れたけどな。まぁ、後半ほぼ聞いてなかったけど。笑 んで、生徒会無くしてどうするつもりやったん?」
俺は、なんで生徒会に違和感を感じて、そして仮に当選していたらどうしようと思っていたのかをゆっくりしゃべりながら、そのヤンキーと帰った。
先生が見回りしてるのにビクビク怯えながらiPodで音楽を聴きながら(校則でiPodが禁止されていた)一人で帰っていた下校時間が、その日は始終不思議そうな顔をしながらも話を聞いてくれるヤンキーとの楽しい時間だった。

ーーーーー

7月10日にある、この国を左右する大事な大事な選挙、
つい最近ようやく二十歳になった自分にとっては初めての投票。

投票所の雰囲気とか匂いってどんななんだろう、
投票用紙ってどんな紙質なんだろう、
投票に参加してから見る選挙結果ってどう感じるんだろう、
あのやたらガタイのよかったヤンキーは元気かな、
あの時生徒会長に当選してた野球部の坊主は今何してんのかな、
なんて事を考えながら、
7月10日、俺は選挙に行こうと思う。

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野間 陸

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